2023 - 現在
デザイナー
2023年に始動したCALMLENCEで、熊谷和幸は創設者兼デザイナーとして、ブランドのコンセプト設定から素材開発、パターン設計、製品の仕上げ、ルックの表現までを一貫して主導する立場にある。ATTACHMENTやKAZUYUKI KUMAGAIで長年培ってきたミニマルな造形、精密なパターンワーク、素材と縫製を重視する姿勢を引き継ぎながら、既存ブランドの延長線上にとどまらない新たな制作環境としてCALMLENCEを立ち上げた点が、この関係の中心となる。ブランド名はcalmとsilenceを組み合わせた造語で、流行や消費の速度から距離を置き、静かな集中の中で服作りに向き合う姿勢を示す。熊谷はその思想を、目立つロゴや過剰な演出ではなく、原料の組み合わせ、糸の撚り、織機の選択、布の洗い、着用時の落ち感といった服の内部構造に落とし込んでいる。多くの生地をブランドのために開発し、織り上がった素材の表情を確認したうえでシルエットや仕様を設計するため、服は単なる既製素材の組み合わせではなく、素材開発とデザインが一体化したものとして成立する。縫製後のガーメントウォッシュを自ら施す工程や、表地だけでなく裏地・内側の仕立てまで整える姿勢にも、着る人の安心感と長期使用を重視する考えが表れている。クラシックなテーラリングやゆとりのあるパンツ、静かな色調を基盤にしつつ、織りの奥行きや洗いによる揺らぎを加えることで、穏やかさの中に強さを持つ服へと再編集している。CALMLENCEにおける熊谷は、名前を貸す外部協業者ではなく、ブランドの美学と制作実務を直接結び付ける創設者兼デザイナーとして位置づけられる。
在任期
熊谷和幸は、ATTACHMENTを離れた後の新たな制作活動としてCALMLENCEを立ち上げ、2023年秋冬シーズンからブランドを展開している。長年のブランド運営で形成したデザイン軸をいったん引き継ぎつつ、より販売的な情報発信やトレンドの即時性から距離を置き、素材開発と服の完成度に集中する移行期として始まった点が特徴。2023年の始動以降、熊谷自身がブランドの方向性と製品設計を継続して担う体制が続いている。
影響
CALMLENCEにおける熊谷和幸の最大の影響は、ブランドの個性をマーケティング上の設定ではなく、素材・設計・仕立ての一貫性によって成立させた点にある。ブランド専用のオリジナル生地、複雑な糸構成、洗いを前提とした設計、裏地や内側まで含めた仕上げを通じて、静かで控えめな外観の内側に強い技術性を組み込んだ。CALMLENCEは、ATTACHMENT期のミニマルな造形を再演するのではなく、熊谷の長年の経験を素材開発と着用感へ集約した、キャリアの集大成としての位置づけを持つ。