1950年に自ら設立したメゾンを、創業者兼デザイナーとして2020年まで主導した人物。前任者からの交代によって就任したのではなく、ブランドそのものを立ち上げ、創作・事業・対外的なイメージ形成を長期にわたり一体で担った。クチュールの
仕立てを基盤にしながら、身体の曲線を強調する従来のエレガンスから距離を置き、幾何学的なフォルム、鮮やかな色彩、構築的なシルエット、
ユニセックス感覚を軸にブランドの造形言語を形成。1953年の女性向けオートクチュール、1954年のバブルドレス、1959年の女性向け既製服、1960年の男性向け既製服を通じて、前衛的なデザインを日常の市場へ接続した。1960年代にはCosmosやCosmocorpsに象徴される宇宙的・未来的な服を展開し、ビニールや合成素材、丸窓状のカットアウト、ヘルメットやゴーグルなどを用いて、ファッションを近代性や宇宙開発への想像力と結びつけた。さらに香水、化粧品、家具、照明、舞台衣装、工業製品へ領域を広げ、ライセンスによって自身の名前を世界規模のライフスタイルブランドへ拡張。服を制作するデザイナーから、創造性を核に事業領域全体を設計するブランド創業者へと役割を拡張した点に、このブランドにおける最大の特徴がある。晩年まで創作と経営への影響力を保ち、Pierre Cardinを実験性、自由、未来志向、大胆な事業展開の象徴として定着させた一方、ライセンスの過度な拡大はブランドイメージの希薄化を招く側面も残した