アレッサンドラ・ファキネッティは、創業者
ヴァレンティノ・ガラヴァーニの引退に伴う移行期に、VALENTINOの全ウィメンズコレクションを統括したクリエイティブ・ディレクター。2007年9月に後継者として起用され、アクセサリー部門を担っていた
マリア・グラツィア・キウリとピエールパオロ・ピッチョーリとの分業体制の上で、クチュール、プレタポルテ、REDやRomaを含む女性向けラインの新たな方向性を示す役割を担った。ファキネッティは、ヴァレンティノが築いた気品、女性らしいシルエット、華やかなイブニングウェアを大きく否定するのではなく、1960年代を思わせる端正でクリーンな構築、柔らかな素材、軽やかなボリューム、繊細なプリーツや立体的な装飾へと置き換えた。初期のプレフォールでは、コクーン型コート、短い
ジャケット、クロップドパンツ、細身の
スカート、ケープ状のドレスなどを組み合わせ、既存の優雅さに自身のプロポーション操作と素材加工を加えた。2008年2月の初プレタポルテでは、日常着としてのスーツやコートからシフォンのドレス、赤のイブニングドレスまでを、甘さに寄りすぎない精密さと軽さで再編集。続くクチュールでも、より現代的で決断力のある顧客に向けた、着用可能なクチュールを志向した。広告では純粋な
ラグジュアリーの記号から距離を置き、パリを舞台にした現代的で動きのある女性像を打ち出し、若い顧客層への接続も試みた。一方、ブランド側が求める創業者の遺産との距離感や経営陣との方向性は次第に揺らぎ、2008年10月、春夏2009年コレクション発表直後に協業を終了。約一年余りの短い在任ながら、創業者交代後のVALENTINOが伝統を保ちながら現代化を模索した最初の試みとして位置づけられる。